party01五ヶ所高原ゴマ姫の草原を守る会

小さい蝶を守ることは、
大いなる自然を守ることに等しい。

ここは高千穂町五ヶ所高原、祖母山(そぼざん)、阿蘇山(あそざん)、久住山(くじゅうざん)、九州の三つの秀峰をを同時に見ることが出来ることから三秀台(さんしゅうだい)と呼ばれている。この草原を舞台に、足元の小さな草花や、そこに生きるささやかな命の営みを守ろうと活動を続けているのが「五ヶ所高原 ゴマ姫の草原を守る会」である。

会長の甲斐秀明さんが活動を始めたきっかけは、この地が自生の南限である花『ヒメユリ』が高度経済成長期を経て激減しているのを目の当たりにしたことだった。草原が開発や観賞目的の採取が原因で絶滅も心配される程に減ってしまったヒメユリを守るには、昔ながらの草原を残し、その大切さを人々に知らせることだと思った。

ヒメユリを守る活動の中で、この高原を訪れる専門家との出会いから、希少な蝶も姿を消しつつあることを知る。『ゴマシジミ』と『ヒメシロチョウ』である。ゴマシジミは『ワレモコウ』という草花、ヒメシロチョウはツルフジバカマという草花を唯一の棲(す)み家として命をつないでいる。その草花が育たなければ蝶も生きることは出来ないことになる。

 

折しも鹿の食害が深刻となり、このままではこの草原は失われてしまうと危惧されていた。
甲斐さん達は平成二十五年から宮崎県の補助を受け、三秀台周辺の草原を防鹿ネットで保護することに着手した。高原全体を守ることは難しいが、せめてこのエリアだけは、ウェストンが訪れた時代の姿そのままに蘇らせたい。そういう思いから、五年をかけてネットで囲んだ草原は約3ヘクタール、今後はその維持補修を続けながら、草原を蘇らせていくつもりだ。

 

甲斐さんは最近、また意外な事を専門家に教わった。ゴマシジミの幼虫は、ワレモコウでふ化した後、地上に下り、アリによって巣の中に運ばれて、アリと共生しながら育つというのだ。だからワレモコウだけを守っていてもゴマシジミが生きられる訳ではない。広大な山々を見晴らす草原の足元の小さな小さな命の世界は、複雑に関係し合って成り立っている。その先に自分達人間も生きているのだ。小さな蝶を守ることは、大いなる自然を守ることに等しい。甲斐さんは仲間たちと、これからも足元を見つめながら地道に活動を続けていく。

 

(ゴマシジミとヒメシロチョウ 宮崎県昆虫調査研究会会長 岩崎郁雄氏撮影)

 

五ヶ所高原 ゴマ姫の草原を守る会(会員22名)
会長:甲斐 英明 〒882-1415 宮崎県西臼杵郡高千穂町五ヶ所673
携帯:090-2513-4461 FAX:0982-75-1403